製造業の海外移転は国を弱体化するので駄目だが海外ODAを使ったインフラ輸出の海外展開はOKではないか。さてトルコ海底列車、初日から故障の車体は韓国製という。
日本支援で夢の海底トンネル 海外黒字化へ高度な技術力活用
2013.11.8 06:24 SankeiBiz
トルコ最大の都市イスタンブールで、アジアと欧州を隔てるボスポラス海峡を海底トンネルでつなぐという150年来の夢を実現した海峡横断地下鉄が先月下旬、日本の支援で開通した。技術的に難度の高い海底トンネル部分を担当したのが大成建設だ。
この数年、大成の海外事業は赤字続きだったが、高度な技術力を生かし安易な価格競争を避けることで、早期の黒字化を目指す。
トルコで難工事
大成の海外事業における躍進を象徴する地下鉄開通式典が10月29日、ボスポラス海峡に面したイスタンブール・ウスクダル駅近くで開かれた。
大成の山内隆司社長が、トルコのエルドアン首相や日本の安倍晋三首相らとともにテープカットをすると、紙吹雪が舞い、市民の歓声がとどろいた。
海底トンネルは、オスマン帝国時代の1860年に設計図が描かれたトルコの悲願だ。今回、運行を開始した海峡横断地下鉄は全長約13.6キロで、日本はトルコの要請に応じて約1533億円の円借款を供与。
大成は現地の建設会社2社と共同事業体(JV)をつくり、2004年8月に工事を始めた。
巨大な箱形の構造物を11個沈めてつなぎ合わせた
大成の技術力が発揮されたのは、海峡を横断する海底部分約1.4キロのトンネル工事だった。「沈埋トンネル工法」と呼ばれる技術を採用。
海底に大きな溝を掘り、約40キロ離れた場所でつくった鉄筋コンクリート製の巨大な箱形の構造物を11個沈めてつなぎ合わせた。
ただ、ボスポラス海峡は潮の流れが速く複雑な上、水深も沈埋トンネルでは世界最深の最大約60メートル。
「世界一難しい沈埋トンネル」
(大成の近江秀味専務)とされる難工事だったが、トンネルは11年2月に貫通した。山内社長は
「日本とトルコの持てる力を結集した結果だ」
と振り返った。
新興国受注に照準
山内社長がJVの成果を強調したのは理由がある。トルコの建設会社は、地理的に近い中東や北アフリカで強いネットワークを持つ。加えて、
「建設労働者の動員力が優れている」
(山内社長)点も、日本のゼネコンには魅力に映った。
このため、大成はトルコ企業と組み、近隣の国や地域での協業に動いている。代表例が、中東・カタールの新ドーハ国際空港の旅客ターミナルなどの建設工事だ。トルコの建設会社とJVを組んで、06年に着工している。
経済発展に伴い、アジアをはじめとする新興国のインフラ需要は急拡大。大成は新興国におけるインフラ関連の受注活動に注力している。
ベトナムでは11年、ハノイ郊外にあるノイバイ国際空港の第2旅客ターミナルの建設工事を受注した。地元のゼネコン最大手とJVをつくり、来年末の完成に向け工事を進めている。
今後は海外事業の収益構造の確立が課題となる。大成は08年のリーマン・ショックのあおりを受け、ドバイ(アラブ首長国連邦)で手掛けていた大型工事の収支悪化に悩んだ苦い経験がある。
この数年、海外事業は赤字から脱却できていない。
ただ、近年はリスク管理の徹底などの取り組みで赤字幅が縮まり、山内社長は
「今年か来年には黒字化を達成したい」
と意気込む。
当面は、受注実績を積み重ねてリスクを読みやすい国や地域を中心に、現地で築いた人脈や地元スタッフを活用し、息の長い海外展開を進める方針。山内社長は
「技術の強みを生かせる案件に的を絞り、海外でのプロジェクトにチャレンジしたい」
と語る。(森田晶宏)